原点。

おかっぱ

2012年06月29日 16:31

「この山の連なり、見てごらん。人が横たわっているみたいでしょ。あれは神様が寝ているんだよ」と誰かが言った。確かにそう見えるし、それ以来ワタシは信じている。現に顔のシルエットの下には琉球王朝時代の王の親類の城跡とお墓があるそうな。写真は明け方に撮ったものだが、夜にはネオンもノイズも無いこの島を照らすのは、家からわずかにこぼれる灯りと夜空の星と月明かりのみ。そして紺青色の空にうっすらと浮かび上がるこの山のシルエット。中学生の頃はお風呂から上がると「髪乾かしてくる~」と言いながら夜道をトボトボ歩き、家のすぐ側にある桟橋に向かうようにして、このシルエットを眺めながら、夜風をドライヤー代わりに髪をなびかせながら、もうすぐ親元を離れる言い知れない不安と期待に思いふけたものです。高校が無いこの離島では「中学を卒業すると同時に親元を離れる」というのが習わしであり宿命。そしてその限りある時間をたっぷり楽しみ、家族や仲間との共有を何よりも大切にするこの島の人々の絆は本当に堅く強く結ばれている。住んでいる頃は実感として無かったが、離れてみるとどれだけありがたく尊いものなのかを思い知る。「故郷は遠く離れて思うもの」ということわざを都合のいい解釈にして言い訳に利用したり。一方ではもっと別の社会を見てみたいという願望がまだまだあるのは事実で。そして「自分のコアな部分をどれだけ故郷に支配されているか」というのは、やはり一度外に出て客観視しないと気付かなかったかも。でもそうやっていつでも帰れる距離に甘えては、最近なかなか帰れてないな、と反省したり。そう思っていた矢先、今日も旧ダイナハの本屋さんに行ったら、2階の沖縄の新書コーナーに我が故郷の本がデデーンと陳列されていた。そして食い入るようにページをめくったらば、出てくる出てくる、知っているあの人この人。DNAに擦り込まれた景色と行事と食べ物の数々。そしてスローガンである「島のこしが島おこし」という言葉の通りに、いつまでもそのままでこのままでありのままで残っていて欲しい、と切に願う。「イエソーダ」の島の見事な商品開発に焦りを感じたり、「ムーンライトマラソン」なお隣の島にも、次々と名産品が登場したりして。でもこの本をめくり終えて裏表紙を眺めているうちに「何だかみんな元気そうで何より」とニンマリしてしまった。そして「観光離島もいいけれど、これはこれでいいのでは」と思ったり。沖縄周辺離島が次々と観光地化していくなかで、一向にその気配を見せないアイランド。ただスロースターターな島なのか、それともそもそもスタートする気が無いのかは定かではないが、きっと神様は横たわって何でも見ているんだろう。ハブいないし人もまばら。時間も忘れるし時計も必要ない。2012年現在、あらゆるインフラが進む中、未だに「携帯の電波が届かないエリア」があるそうな。白い犬、星飛雄馬、そして桑田さん、「オカケニナッタデンワハ デンパノトドカナイバショニアルカ デンゲンガハイッテイナイタメ カカリマセン・・」なスポットに電波という光を。そしてワタシも今夏は充電しに行きましょう~。


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