空き缶ひとつ。

おかっぱ

2013年10月23日 12:45


ある木曜日の朝。ワタシは資源ごみの空き缶をビニール袋に入れて、家の前に置きました。
ワタシがその場をあとにすると、ひとりの男性がむこうから歩いてきて、空き缶の入った袋をあけ、中からいくつかの空き缶だけを取って、ふたたびビニールを結びとじました。

別の週の木曜日の朝。同じ時間帯に空き缶を家の前に置いたら、そのときの男性がワタシが置いたビニール袋をあけて、空き缶を取り出していました。

別の木曜日のある朝。あわただしく家を出て、置くというより投げるに近い勢いでビニール袋をいつもの場所に置いたら、ガシャンと音をたててしまい、そのあと後ろの方から軽トラが走り近づいてきて、ビニール袋ごと手際よく持っていきました。

その時ふと、あの男性が頭に浮かびました。

あの男性はワタシが空き缶を出すタイミングを覚えていたかもしれない。
二度目は偶然じゃなかったかもしれない。

そうであっても、でなくとも。

男性は自分の足で空き缶を集めていました。
軽トラでもなく、自転車でもなく、
市の回収業者でもありません。
自分の足で歩き、空き缶をみつけ、
小さくつぶして、まとめて、
収入にしている様子でした。

聞くところによると、一部の地域では
空き缶の回収にも見えない境界線があるそうで。
「ここのエリアは入れない」
「ここからここまではテリトリー」
というのが存在するのだとか。

じつにかなしいことです。

空き缶だけでしょうか。
その男性から奪ってるもの。

缶コーラをグビグビのみながら
おせっかいに考えてしまいます。

最近、車を走らせていたら
別の地域でその男性が空き缶を持っているのを見かけました。

じんわりと目頭が熱くなって
ワタシもがんばろ、と思いました。

自分の足でかせいだものが
何らかによって阻まれる。

あるんですよね、そういうこと。

くじけずに、めげずに、がんばれ。

その男性に向かってエールを送りつつ
自分にも言い聞かせたりして。
  
 

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