ころこりほりほる2

釣り人を撮っていました
小高くてすこし離れた場所から
しばらく息をひそめ
岩場にくっつくように
かがんで撮っていました

釣り人の細やかな動きや
釣り竿のダイナミックなしなり
そばには口を開けて待つ
空のクーラーボックス
おだやかに流れる
その日の空気も
取りこむように
シャッターをきりました

しばらくすると
人や竿の動きよりも
波に焦点をあわせている
自分に気づきました

岩場にうちつける
波のおと
たじろぐ人間を
もてあそぶように
よせてはかえす波

圧倒的なおおきさは
ちっぽけな私を
ぐいぐい惹きこんでいきました

弧をえがく波　
おどる水
ほとばしる粒　
もっと、もっと近づいて
ひとつのこらず撮ってみたい

一枚の写真に
私の思いが写りました

後日、この写真を
ある方に見せたら
「もっと引きで撮りなさい」と
「全体を捉えることに集中しなさい」と
アドバイスをうけました

写真がうまい人は
つねに全体をみている
写真を知っている人は
おさえるポイント、コツ
魅せるすべを知っている

私は気づけば
対象によってしまう
全体なんてどうでもいい、と
ポイントもコツもテクニックも
なにもかもなくたっていい、と
どこかで切り替わってしまう

それがあらわになった一枚
残念、と言われた
忘れちゃいけない一枚

それでももっと近づきたい