ころこりほりほる2

私が小学生の頃、
仲のいいお友達ができて
その子の家に遊びに行ったことがある
彼女は一人っ子で両親に可愛がられ
部屋にはおもちゃがたくさんあった
なかでもリカちゃん人形がお気に入りで
当時流行っていたその人形を使って
おままごとをして遊んだ記憶がある
リカちゃん人形は一体しかなかったので
私は別の人形を借りて
彼女はリカちゃん人形を持って
時にはお互いの人形を交換しながら
お出かけごっこや学校ごっこなんかをして
過ごしていたような気がする

そんな事を繰り返すある日
学校が終わってお友達の家に行くと
「リカちゃん人形がなくなった」と
お友達が言った
玄関先でお母さんと二人立つお友達は
「だからあそべない」と言った
私はうんと言って家に戻った

それからまた別の日
私はそのお友達の家に行った
するとお友達が玄関に出てきて
「あそべない」と言った
お友達の後ろにはお母さんがいて
私を見つめてやさしく言った
「ねぇ〇〇ちゃん、リカちゃん人形を
家に持って帰っていないよね？」と
私の表情を伺うように言った
（一語一句正確ではないけれど
物腰が柔らかく、私を気遣いながら
探りながらの言葉だった）

私は首を横に振って否定して
言葉が発せられないままに
玄関の前に立ちすくんでいた
人形とっていないよ、と
心の中でつよく思った
そのことを境に私は
お友達の家に行けなくって
遊ぶこともなくなった

お友達は私ではない別のお友達を
家に招いて遊ぶようになった
別のお友達づてに聞いた話では
あれからお友達はすぐ
新しいリカちゃん人形を買ってもらったが
じつはその後に
紛失したリカちゃん人形が見つかったので
二体のリカちゃん人形で遊んでいる
ということをそのとき知った

この経験は私にとって
とても学びが多かった
そしてそのとき痛感した
それは、持ってない子は欲しがる、
と人は思いがちだがそれは違ってて
当時の私は持っていないなりに
欲張らず、工夫をしながら
遊びに自由を感じていたし、
ゼロはゼロなりの楽しみを見出す
ことをそこで体感していた
そして加えると、
子供も大人になっても、人は
１つ持ってると今度は２つめ、と
さらに増やしたくなる生物で
より自分の満足に近づけようと
あらゆる策を練るものなんだな
ということを知った

0のままの状態をどう活かすのか
2から3へと増やし続けるべきなのか
1だけでは満足できないのだろうか

そんな事を思いながら
今は0を楽しむ大人でありたい